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風花未来の今日の詩は「あの雨の匂い」です。

 

あの雨の匂い

 

一年のうちで

必ず何度か想い浮かぶ

ひとつの情景がある

 

あの時

わたしは

まだ

小学3年生だった

 

雨の日

友だちの家に

なぜか

ぽつんと

ひとり

残されて

 

縁側に

座って

留守番

していた

 

あのとき

わたしは

一心に

雨を

見つめていた

 

静かだった

 

風がないので

雨は

糸をまっすぐに

垂れるように

降っている

 

樹木は

雨を浴びて

若緑に

輝いていた

 

今でも鮮明に

よみがえるのは

あの静けさと

雨の匂い

 

雨に匂いを

覚えたのは

あれが最初だった

 

いや

匂いに

支配されたのは

あの時が

生まれて

初めてだった

 

今になって

なぜか

そんな気がして

 

そんな気が

体じゅうを

巡りにめぐってゆくうちに

 

あの縁側の

小学三年生に

わたしは

なりきっている

 

ああ

 

あの甘い

 

甘い

 

懐かしい匂い

 

最近は

雨に匂いがあることさえ

忘れてしまっていたけれど

 

あの時の私は

雨の匂いが

体に沁み入ってゆくのを

確かに感じていた

 

感じ入っていた

 

静けさの底で

ひとりぼっちで

縁側に

ぽつんと

座りながら

 

今日は無性に

 

あの静けさと

 

あの雨の匂いに

 

帰りたい

 

帰ってしまいたい