Views: 7

風花未来の今日の詩は「天空を渡る鳥」です。
みなさん、こんにちは。風花未来です。
今日は、私の詩の中でも、とりわけ深い場所に根を張っている一篇──
「天空を渡る鳥」について、お話しさせてください。
この詩は、私がまだ幼かった頃の、ある夕暮れの記憶をもとにしています。
人は、人生のどこかで、ふとした瞬間に「自分が変わった」と感じることがあります。
それは大きな事件ではなく、誰にも気づかれないほど静かな出来事であることが多い。
けれど、その静けさこそが、魂の奥底に深く沈み、長い時間をかけて私たちを形づくっていくのだと思うのです。
あの日、私はただの少年でした。
しかし、空を渡っていく鳥たちを見上げた瞬間、世界の密度が変わり、時間が止まり、自分という存在がどこかへ吸い上げられていくような感覚に包まれました。
その体験は、今も私の詩の根源にあります。
「言葉を紡ぐ」という行為の奥にある、“魂がどこへ向かおうとしているのか”という問いの始まりでもありました。
それでは、まずは詩そのものを、静かに置かせてください。
どうか、あなたの心の深いところで、そっと響かせていただければ幸いです。
天空を渡る鳥
あの時から
わたしは変わった
幼い頃
あれは
静まりかえった
夕暮れ時だった
ひとりで遊び疲れて
家に帰る途中
なぜか あの時
ふと わたしは
真上を見上げた
目に入ったのは
空高く飛翔する
鳥の群れだった
渡り鳥だろうか
ふだんの暮らしでは
見たことがない
鳥たちだった
頭上はるか遠くの空を
飛んで行くのに
なぜか くっきりと
細部の形状までが見えた
空気が澄んでいたからか
それとも
わたしの心が
いつもと違っていたので
あれほどまでに
鳥の姿かたちが
鮮明に見えたのだろうか
どれくらいの時間
わたしは
鳥を見つめていたのだろう
それは わからないが
何もかもを忘れて
ただ 鳥を見つめていた
見つめていた
あの時から
わたしは変わった
あれから
気が遠くなるほど
時が流れ
歳を重ねてきたが
あの日 あの時に見た
天空を渡る鳥たちほど
美しいものを
この世で 一度も
見ていない気がする
あの時のことを
想いだすと
碧色に澄んだ
深い清流のように
心が奥底から
しっとりと
透きとおってゆくのだけれど
と同時に
怖い気持ちにもなる
あの時
ひとりぼっちの少年は
神に似た鳥に
心をうばわれた
というより
少年の魂は
空に
吸い上げられてしまった
あのまま
少年が昇天してしまっても
何の不思議はない
不思議はない
もしも 昇天していたら
今 ここで こうして
息をしている わたしは
いないことになる
そうした想いが
不思議なほど
しっとりと
今は
心になじんでくる
あの時と同じくらい
静まりかえった
夕暮れ時に
今 わたしは
立っている
詩の奥にあるもの──風花未来より
この詩に描かれているのは、「美しさ」と「恐れ」が同時に胸に宿る瞬間です。
美しいものは、ときに人の魂を揺さぶり、その揺れがあまりにも深いと、
自分という存在がほどけてしまいそうになる。
その感覚を、幼い私は“怖い”と感じました。
しかし今は、その“怖さ”を、静かに受け入れられるようになりました。
魂が震えるほどの美しさに出会えることは、人生の中でそう多くはありません。
だからこそ、その瞬間は宝物なのです。
詩を書くという行為は、あの日の鳥たちのように、言葉が空へ向かって羽ばたいていくのを、ただ見つめることに似ています。
私は今も、あの夕暮れの少年のまま、そして同時に、あの日から遠く離れた場所に立つ大人でもあります。
その両方の私が、これからも静かに詩を紡いでいけたらと思っています。
今日、この詩を読んでくださったあなたの心にも、小さな羽ばたきが生まれていたら、それほど嬉しいことはありません。
風花未来

