今回の風花未来の詩は「正午の太陽」。
「正午」は「しょうご」と読んでください。
「正午(まひる)なり」という映画を知っている人ならば「まひる」と読まれるかもしれませんね。
正午の太陽
午後0時 あるいは 午前12時
この時刻に
太陽は子午線を通過する
この時刻に太陽を
生まれて初めて
真っ直ぐ見つめた
正午の太陽の光を
全身で浴び
その場に立ち尽くした
私の真正面に君臨する
真冬の正午の太陽は
巨大で
激しく
何かに満ちみちていた
正午の太陽は特別だ
苛烈な視線を感じて
正午の太陽を正視した者は
そのまま大地に釘づけにされる
正午の太陽は怒っていた
有史以来
人類のこの地上で
ロクなことをしてこなかった
その愚行の一部始終を
カッを眼を見開いて
目撃しつづけてきた太陽は
怒っているが
身動きもせず
真正面から見つめていると
怒りは太陽という
巨大な光の総体にとって
わずかな感情にすぎないと
わかってくる
正午の太陽は
私たち人類にとって
計量できない巨大な愛という光を
地上に惜しげもなく
降らし続けているのだ
太陽の愛は激しすぎるから
ちっぽけな私たち人類は
そのまぶしさに耐えられなくて
顔をそむけ
闇に潜入し
罪を犯しつづけ
お互いを気づつけ合い
戦争を終わらせることも
今もなおできないでいる
正午の太陽
何もかも
私たち人類の尺度をこえて
大きく円く
何もかもを包みこむ
太陽という唯一無二の存在に
生まれて初めて気づいた
あの日 あの時
私が見つめていた太陽は
人生の子午線で静止したまま
じっと動かないで
私を見つめ続けている