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風花未来の今日の詩は「つながることの奇跡」です。

 

つながった

 

ひょっとしたら今日は

化学療法室を出た後

スワンのことを

詩にすることになる

 

そんな予感を

覚えながら

抗がん剤の投与を受けた

 

だが

その予測は

完全に吹き飛んだ

 

スワンのこと

天使のことを

語る余裕が

今日の

わたしにはない

 

予測不可能な

大きな事件が

化学療法室で起きたから

 

気が遠くなるほど

以前の記憶

残酷な闇が

生々しくよみがえった

 

映写機がカラカラと

むなしい音を立てて

空回りしていた記憶

 

愛する人が

突然 わたしの前を去り

その人の記憶は

そこで途切れた

 

記憶という

フイルムが

突然 切れてしまったまま

気が遠くなるほどの歳月が流れた

 

あの遠くて深い

静寂の闇から

一転

光が天から降りてきて

わたしを包んだ

 

今日は

一度切れたフイルムつながった

 

かつて

わたしを純白の光で

優しく包んでくれた人に

また 逢えたのだ

遠い遠い過去に

わたしの前から消えた

あの人ではなく

 

この化学療法室で

出逢い

擦れ違ってしまった人に

今日 ようやく

逢えたのだ

 

今日は 天使とか

スワンとか

そういう言葉は

使いたくない

 

逢いたかった人に

 

逢えて

話せて

微笑みあえて

 

自分でも

驚くほど

素直な気持ちになれたから

 

大事な記憶というフイルムが

つながることの歓びを

何という言葉で

あらわしたら良いのだろう

 

運命とか

奇跡とか

 

そういう言葉も

今日は使いたくない

 

逢いたかった人に

 

逢えて

話せて

微笑みあえて

 

途切れたものが

つながり

息を吹き返し

脈打ちはじめた

 

わたしは 今日

生まれ変わった気がする