今回の風花未来の詩は「眠るために生きている」です。

 

眠るために生きているが

 

抗がん剤投与を再開してから

一日が恐ろしく短い

 

ほとんど眠っているからだ

 

強烈な薬は

わたしに 眠りを強制する

 

今は眠ることが

癌を治すことに

役立っているのかもしれない

 

しかし

この生活が

いつまで続くのか

 

全身転移をまぬがれ

寿命をのばし

自分らしく生きられる時間を

増やすことを

化学療法は目指しているのではないか

 

そのために

生きるために眠ることは

意味があるだろう

 

だが

今のわたしの暮らしは

眠るために生きている

そんな気がしてならない

 

ほとんど何もできず

呆気ないほど

一日が終わってゆく

時間が紙くずのように消え

あっという間に

遠い闇のかなたに

去ってゆく

 

違う

 

これは違う

 

わたしは

自分らしく

人らしく

生きたいのだ

 

一日は

なんて長いんだろう

 

天空に輝く

満天の星のごとく

毎日の暮らしでは

人生の宝石が

無数に見つけられる

 

そんなふうに

一生に一度しかない

毎日という一日は

神様からの贈り物のように

気高いものであってほしい

 

これからの人生は

発見と

感動で

満ち満ちていてほしいのだ

 

いや いや

一日に たったひとつでいい

どんなに小さなことでもいいから

本物の ときめきと

出逢いたい

そう心から願うことを

わたしに 許してほしい

 

だから

それだから

これからは

生きるために

眠ろう

 

そのためには……