金子みすゞの「露」という詩をご紹介します。
露(つゆ)
誰だれにもいわずにおきましょう。
朝のお庭のすみっこで、
花がほろりと泣いたこと。
もしも噂うわさがひろがって
蜂はちのお耳へはいったら、
わるいことでもしたように、
蜜みつをかえしに行ゆくでしょう。
この詩は、天使が書いたのでしょうか。それとも、詩の妖精がつづったのでしょうか。
この詩のテーマは「優しさ」、あるいは「思いやり」ですね。
この詩「露」の中で表現されている「優しさ」や「思いやり」と比べると、私たち人間が日常生活で言っている「優しさ」と「思いやり」が、ひどくおおざっぱで、ゴツゴツとしていて、時に事務的であり、冷淡でさえあることに気づきます。
この「露」という作品の中に息づいている「優しさ」を、感じることができるのですから、きっと私たちの中にも、本物の「優しさ」はあるのでしょう。
だとするならば、日常をもう少し、慌てないで、時間をかけて、ていねいに暮らせば、もっと優しくなれたり、思いやりを持てるかもしれません。
そして、私たちも天使や妖精に近づける……いえいえ、本当の人に戻れると思うのです。
この詩は天使か妖精が書いたのでしょうか? いいえ、金子みすゞという人間が書いたのです。
日本の名作詩を集めてみましたので、ぜひとも、ご確認くださいm(__)m