映画「サラリーマン専科」は、1995年12月23日公開の日本映画。
監督は山田洋次かなと思いつつ、ちょっと違う気がしたのだが、朝原雄三だった。
朝原雄三は長いこと山田洋次の助監督をつとめていたので、映画には山田テイストが反映していることは確かだ。
この映画の主人公は、三宅裕司が演じる、しがない庶務課長である。
だが、ひときわの輝きを放っている俳優がいた。それは、加勢大周。
到底、演技派とはいえないはずの二枚目俳優が、この映画では、特異なキャラを物の見事に演じ切っている。
イノセントと呼ぶべきキャラ、つまり、世間ずれしていない、処世術など全く知らない、純粋な青年を、ごく自然に演じていた。
裕木奈江にプロポーズするシーンは、泣けるほどだ。
こういう青年が、この世にいてくれる、そう思うだけで心が癒される。
この加勢大周のおかげで、この映画には深みが生まれ、味わいが生まれ、光るものがプラスされた。
そのため、単なる喜劇では片づけられない、名作と呼びたくなるようなサムシングのある映画になっている。
キャスティングを点検すると、まったく無駄がない。ベテラン俳優たちが、自分に与えられた役を、きっちりこなしている。
以下、キャストをあげておくが、一人欠けても映画が成立しないくらい、脇役まで、しまった演技を見せてくれていて、確かな「芸」を堪能できる。
三宅裕司
田中好子
田中邦衛
裕木奈江
加勢大周
小林克也
斎藤陽子
南田洋子
西村晃
実はこの映画、私が鑑賞するのは、3回目である。何度見て、飽きないで最後まで楽しめるのだ。
この「サラリーマン専科」は、日本映画の確かな収穫であり、貴重な喜劇映画の名作なのである。