「朝の波紋」は、1952年に公開された日本映画。
監督は五所平之助。主演は高峰秀子と池部良。
先ほど見終わったのだが、日本映画のオールタイムのベスト1に推したいくらいの感銘を受けた。
清冽かつ心温まる抒情詩のような映画である。
高峰秀子が主演した映画はいろいろと見てきてはいるが、この「朝の波紋」の高峰秀子が最も美しいのではないかと感じた。
テーマは純粋だ。「愛すること、生きること」である。
池部良は、瘦せていて、後の池部良とは顔相が違っていた。
洗練されすぎておらず、浮世離れしたキャラの本作には合っていたと思う。
小林正樹の初期作品にも、このような清潔な映画があるが、やはり1952年という時代の繁栄だろうか。
何しろ、戦後7年しか経っておらず、復興期の貧しさ、侘しさが滲み出ている。
そうした時代だからこそ、温かな愛情、ささやかな幸せ、淡い希望が、人々には必要だったのだ。
映画作品として大傑作ではないが、この「朝の波紋」を、私は推しつづけたいと心に決めた。
心が渇ききっており、本物の温もりを忘れかけている現代にこそ、この「朝の波紋」に流れる、清き愛情が不可欠なのではないだろうか。