イングリッド・バーグマン主演の古い映画ということで、タイトルも「ガス燈」であり、てっきりラブロマンスだと思って見始めたのですが、話はどんどん違う方向に進んで行ってしまったのです。

 

予想したジャンルの映画ではなかったのですが、見終わって、期待以上に迫ってくるものがある強烈な名作だったので、感想を書かずにはおれなくなりました。

 

映画「ガス燈」は、1944年作。監督はジョージ・キューカー

 

 

ジョージ・キューカーは映画「マイ・フェア・レディ」でアカデミー監督賞とゴールデングローブ監督賞を受賞している監督です。

 

イングリッド・バーグマンは、欠点のない絶世の美女というイメージがあったのです。しかし、この映画を見て、そのイメージはものの見事に打ち砕かれました。

 

イングリッド・バーグマンの陰影に富んだ表情と身振り手振りは(それは時に極めて演劇的でありました)は、繊細かつ強烈で、演技派女優という名こそふさわしい。

 

実際にこの「ガス燈」により、アカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ主演女優賞 (ドラマ部門)を受賞しています。

 

映画作品としても一級品で、ヒッチコックの映画はほとんど見ているつもりでしたが、こんな傑作を見落としていたのは、別の意味でうかつでした。

この映画の立派さは、オープニングとラストの鮮やかさにもあります。

 

特にラストのイングリッド・バーグマンが夫に心情を報復的に吐露するシーンは、激しく、悲痛で、美しかった。

 

映画というよりも、完成された劇を見ているような強い感銘を受けました。

 

ラストの描き方によって、夫役のシャルル・ボワイエの悪辣さも、結局は、イングリッド・バーグマンの美しさを全力で引き立てるだけに終わってしまった、そこに演劇を見終わった時のようなカタルシスを覚えたのです。

 

また1つの役を完璧に演じきったイングリッド・バーグマンの女優魂に、拍手を送りたいと素直に、強く感じました。

 

監督の冷徹な知性が激しい感情を完璧な様式美の中におさめているのですが、冷静さと激烈さとのコントラストが、たまらない快感を呼ぶのでしょうね。

 

もう1つの魅力は、小道具。

 

しばしば映し出されるガス燈もその1つですが、小道具の使い方が巧みで、1つひとつが実に効いているのです。

 

ともあれ、映画「ガス燈」は、映画史上に残る名作であることに間違いありません。