風花未来の今日の詩は「糸トンボ」です。
糸トンボ
池のほとりに
しゃがみこんで
じいっと
息をひそめていた
いっしんに
見つめていたものは
水面すれすれに舞い
やがて
水草にとまった
糸トンボ
蒼く輝く
か細い昆虫は
トンボというよりも
奇跡と呼びたくなる
宝石だった
これほど繊細で
美わしい生物が
羽根をふるわせている
一点の濁りもなく
命の光をはなっているのは
世界そのものへの祝福
至高の美に
埋没して
われを忘れていた
遠い日の記憶
あの少年の
胸のときめきが
いま なぜか
生き生きと
よみがえってくる
もう一度
らしく
生き始めてみよう


