「詩心回帰(しごころかいき)」に関する記事は、以下にまとめましたので、ご一読いただけたら幸いです。
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久しぶりにヒッチコック映画を見た。「断崖」。
「断崖」(だんがい、Suspicion)は、1941年に公開されたアメリカ映画。
ヒッチコックの初期作品なので、作品としての完成度は高くはない。
しかし、主演女優のジョーン・フォンテインは際立っている。アカデミー主演女優賞を受賞したのも素直にうなずけた。
ジョーン・フォンテインが際立っているという意味は、女優としての演技力はもちろんだが、その存在が人というよりも心理を持つ人形のような非現実的な美しさにまで到達していた。これは凄いことだ。
本来は役回りとして、ほとんど同列に論じなければならないケーリー・グラントが、すっかりかすんでしまった。単なる、ジョーン・フォンテインの引き立て役にすぎないと言ったら、ケーリー・グラントのファンの方には怒られるだろうか。
ジョーン・フォンテインは、夫の行動に疑問を持ち、最後は自分が殺されると思い込む。
一人相撲をとっている、その心理のエスカレートがたまらなく美しい。
その意味で、この映画は、ジョーン・フォンテインの一人芝居と呼びたいと、私は思っている。
妻の恐怖心がテーマになっている名作映画に「ガス燈」がある。
⇒映画「ガス燈」でイングリッド・バーグマンが迫真の演技を披露。
作品としては「ガス燈」の方が上だが、ジョーン・フォンテーヌの存在感は、イングリッド・バーグマンに負けていない。
久しぶりに川島雄三監督の映画を見た。
「あした来る人」。
1955年の作品だが、ハイカラであり、インテリジェンスに富んでいる。
戦争が終わり、高度成長をしてゆくなかで、男女の生き方も大きく変化するのは当然だ。
その新しいライフスタイル、恋愛、結婚の形を、ストイックに、そしてドラマチックに、しかも、泥臭くならないように、洗練されたスタイルで描き切っている。
さすがに、才能豊かな映画監督、川島雄三の映画だ。
主な出演者は以下のとおり。
山村聰、三橋達也、月丘夢路、新珠三千代、三國連太郎
川島雄三ごのみの演技派俳優たちがそろっている。昭和という時代は役者の宝庫だったということが、川島雄三の映画を見ていても痛感せざるをえない。
映画だけでなく、あらゆる表現活動のレベルが下がっている。その原因について、ここで語るつもりはない。
ただ、現代人は、じっくりと時間をかけて、打算をどがえしにして、何もかもを捨て去り、一つことに打ち込みにくい環境におかれていることだけは確かだ。
「あした来る人」。古き良き時代の映画、というか、未来にまだ見ぬ輝きを期待できた時代の作品だ、ということだけは確かである。