久しぶりにヒッチコック映画を見た。「断崖」。
「断崖」(だんがい、Suspicion)は、1941年に公開されたアメリカ映画。
ヒッチコックの初期作品なので、作品としての完成度は高くはない。
しかし、主演女優のジョーン・フォンテインは際立っている。アカデミー主演女優賞を受賞したのも素直にうなずけた。
ジョーン・フォンテインが際立っているという意味は、女優としての演技力はもちろんだが、その存在が人というよりも心理を持つ人形のような非現実的な美しさにまで到達していた。これは凄いことだ。
本来は役回りとして、ほとんど同列に論じなければならないケーリー・グラントが、すっかりかすんでしまった。単なる、ジョーン・フォンテインの引き立て役にすぎないと言ったら、ケーリー・グラントのファンの方には怒られるだろうか。
ジョーン・フォンテインは、夫の行動に疑問を持ち、最後は自分が殺されると思い込む。
一人相撲をとっている、その心理のエスカレートがたまらなく美しい。
その意味で、この映画は、ジョーン・フォンテインの一人芝居と呼びたいと、私は思っている。
妻の恐怖心がテーマになっている名作映画に「ガス燈」がある。
⇒映画「ガス燈」でイングリッド・バーグマンが迫真の演技を披露。
作品としては「ガス燈」の方が上だが、ジョーン・フォンテーヌの存在感は、イングリッド・バーグマンに負けていない。