風花未来の今日の詩は「あのサンドイッチ」です。
あのサンドイッチ
あのサンドイッチが
無性に食べたい
薄っぺらなハムとキュウリと
マヨネーズとマスタードしか
入っていない
あのシンプル過ぎるサンドイッチが
無性に食べたい
何年か前
そういう懐かしいサンドイッチが
今も食べられる店があると聞いて
新宿のクラシック音楽が流れる
昔ながらの喫茶店に出かけたことがある
確かに昭和の風情がにじむ
サンドイッチだった
しかし
価格がとんでもなく高かった
懐かしさへの代金は
こんなにも高価なのかと失望した
私が食べたいのは
まずもって
安くなくっちゃいけない
いや
ほどほどの値段であってほしい
こんな世知がらい時代だから
すこしくらいは高くてもよい
そして
余計な装飾がない
新しさを気どらない
質素で
つつましやかな
心にまで沁みる
あのサンドイッチなのだ
ああ
あのサンドイッチが
無性に食べたい