テレビドラマ「若者たち」の27話「祭りの夜」を観て驚いた。
演劇に室内劇(密室劇・会話劇)というものがあって、例えば、舞台の真ん中にちゃぶ台がおいてあるだけで、役者がそこでしゃべくって芝居を成立させる形式がある。
ドラマ「若者たち」はまるで室内劇だ。ドラマというより演劇のような見ごたえを感じる。
「若者たち」の主要登場人物は、5人の兄弟。その5人が入れ代わり立ち代わり、しゃべくりまくって、それでもって、実に面白いお芝居を成立させてしまった、それが第27話の「祭りの夜」である。
どうしてこんなアクロバティックな、無謀ともいえる演出ができたのか?
それは、5人の役者の演技力の高さだ。全員、舞台などでたたき上げられてきた役者ではないだろうか。
全員がいわゆる「演技派の役者」なのだ。
身振り手振り、抑揚のある、リズミカルなセリフまわしは、それだけで快感を覚える。
この「若者たち」は、室内劇であると同時に、心理劇だ。
心理の揺れを、心理の襞を、実に豊かに描きだしている。アクションなしに、心理の描出だけで興奮できるドラマはすばらしい。
豊富な演劇人がいたからこそ、戦後日本の映画の黄金期があり、2000年くらいまでは、テレビドラマも面白かったのだ、と改めて思った。