不思議です。渡辺謙が主演する映画やドラマはほとんどすべて永久保存版になってしまうからのようです。

 

今回アマゾンビデオで鑑賞したドラマ「しあわせの記録」も、本当に素晴らしい。

 

何より、ドラマという表現形式そのものが、こういう脚本と役者の演技によってドラマになったことを歓んでいるように感じられるのです。

 

私はドラマで良かった。こういう結実が得られるのだから。シナリオ君ありがとう。役者のみなさんお疲れさま。私は本当にドラマに生まれてきた良かったと、しみじみ感じます。

 

そういうふうな、ドラマの歓びの声が聞こえてきそうなくらい、このドラマ「しあわせの記録」は良かった。

 

渡辺謙が出演した作品、そのすべてが傑作というわけではありません。外国映画では大したことない作品もあるし、邦画の中には駄作もあります。

 

しかし、多くの場合、渡辺謙が出演する映画やドラマは一定の質を保っているように感じられるのです。

 

これには、二つの要素があると思います。

 

渡辺謙を主演に選んだ時点で、製作側がかなり力を入れているので、作品の質は当然高くなる。もうひとつは、渡辺謙の熱演が、作品のクオリティを押し上げているということ。

 

この「しあわせの記録」は、大石静の脚本がまず優れていました。そして、渡辺謙の演技は間違いなし。

 

特筆すべきは、渡辺謙の元妻を演じた麻生祐未の存在。もともと芸達者とは思っていましたが、作品に恵まれると、ここまで見ごとな味を出してくれるとは、驚嘆しました。

 

渡辺謙と麻生祐未の絶妙なコラボレーションが、このドラマの最大の見どころと言って間違いありません。

 

そこに二人の娘、北川景子二階堂ふみが加わり、絶妙な四重奏を展開します。

 

これまで日本で描き継がれてきたホームドラマとは真逆の方法で描かれているのですが、それがまた新鮮であり、真逆でありながら、家族の心理、情愛がきめ細やかに描出されていました。

 

渡辺謙もいいし、麻生祐未もいい。しかも、脚本も演出もいい。

 

新しいホームドラマの傑作がここに誕生した……そう素直に評価したいと思います。