最近、見たい映画が見つかりにくく、まずは山田洋次監督の作品を探してみる習慣になっている。
今回は、かなり前に鑑賞したことがある「霧の旗」という映画を見てみた。
「霧の旗」は、1965年5月28日公開の日本映画。主演は倍賞千恵子。新珠三千代、滝沢修が、確かな存在感を示している。
この「霧の旗」という映画を語る場合、原作となった松本清張の同名の小説に触れたいのだが、未読である。
それよりも何よりも、この「霧の旗」は、山田洋次らしくない作品であることを、まず指摘しなければならない。
山田洋次は喜劇が得意な映画監督である。シリアスな作品もあるが、「幸せの黄色いハンカチ」を生むまでは、それほど惹かれるものはない。「家族」「故郷」は山田洋次の代表作(佳作)ではあるが、真面目すぎて面白くない。
ところが、この「霧の旗」は喜劇ではないのに、実に面白いのである。
もちろん、松本清張の原作が面白いからだろうが、こういう復讐劇を山田洋次が監督したことが、ちょっと信じられないのである。
しかし、山田洋次がかつて野村芳太郎監督の助監督だったことを知ると、納得できた。
野村芳太郎監督はさかんに松本清張の小説を映画化した人だからだ。
しかし、こうしたサスペンスを山田洋次は、他に監督していないと思う。やはり、本来の山田洋次節とは違うのである。
それにしても、自分の得意分野でないにも関わらず、これだけの完成度を示すとは、山田洋次の監督としての手腕は半端ではない。