まど・みちおの「じめん」という詩を取り上げます。

 

 

地面

 

人が歩くときに 足音がするのは

歩いているよ

歩いているよ

わたしが 歩いているよ

と その足音で いいながら

歩いているのです

 

それはどんな人でもですが

それはどんなものでもです

 

いまも そこの人通りにまじって

アリたちが 歩いています

歩いているよ

歩いているよ

ぼくが 歩いているよ

わたしが 歩いているよ

と 小さな きこえないほどの

足音で いいながら…

 

じめんだけが それを

ききわけています

気をつけて

気をつけて

ほんとに みんな 気をつけて

と いのるように…

 

この「じめん」という詩を読んで、やはり、まど・みちおは天才だと感じた。

 

最後の連の「気をつけて」を3回書いている、この「気をつけて」は書けない。ふつうの詩人では絶対に書けない。