永遠の父と娘の姿といえば、小津安二郎監督の「晩春」を想起するが、今日ご紹介する映画では、もう一つの素晴らしい父娘像が描きだされています。

 

その映画は「おゆきさん」。1966年に日活から公開されました。

 

おゆきさん

 

主演は和泉雅子笠智衆。原節子ではなく、和泉雅子なのです。

 

監督:鍛冶昇

画:坂上静翁

原作:塩田良平(雪華社、光風社刊「おゆき」より)

脚本:倉本聰

 

1966年、東京五輪が終わって2年目の日本に、こういう映画が生まれていたとは、心が幾分かは救われた気がしました。

 

お手伝いさんとして住み込んだ、ゆきこと言う娘とその家の主人との心の触れ合いを描いています。

 

「おゆきは、今の人間じゃない、(今の時代が)忘れられてしまったものを持っている素晴らしい娘なんだ。あの娘は花なんじゃよ」という意味のことを笠智衆が、おゆきを好きだった(ふられてしまった)青年に酔っぱらって言うのです。

 

古き良き時代のヒューマンホームドラマですが、和泉雅子と笠智衆の魅力が存分に描かれている点において、極めて貴重な映画だと思うのであります。