風花未来が自ら編んだ「歌と果実」という第一詩集の中から、「紫色の雨」という詩をご紹介。
紫色の雨
白く渇いた石の上にも
見知らぬ国から
遠い時代から
雨が落ちてきた
紫色の雨が落ちてきた
白い小さな石たちは
この時だけを待っていたかのように
かすかな声をもらして
歓んでいる
遠い昔
ここには川が流れていたのかもしれない
いくつもの命がここで生まれ
いくつもの運命がここを通り過ぎ
消えて行ったのかもしれない
果てしもない嵐の中で
果てしもない争いがつづき
はかりしれないほどの血が
ここで流されていたのだろう
だが 今は
誰も いない
白く渇いた石の上にも
遠い天空から
雨が落ちている
紫色の雨が落ちている