映画「妻二人」を初めて観た。増村保造監督の作品はほとんどすべて観ているはずだが、この映画は未見だったのだ。
傑作である。
映画は人間の真実を描き出す総合芸術だといわれる。
では、この映画「妻二人」は、人間の真実を、二人の女性を描くことで、女性の真実をえぐりだすことに成功しているだろうか。
増村保造は、確かに「えぐる」作家だ。
表面的な描写を、増村保造は極端に嫌う。
赤裸々な人間描写を好む。
話を元に戻そう。増村はこの「妻二人」で、人間の真実を描出し切ったといえるのか?
答えは、ノーだ。
増村が描いたのは、増村という人間のフィルターを通って出てきた、独特の女性像である。
現実に、この世に、このような女性はいないだろう。
いないが、生み出したのだ、増村保造監督が。
その生み出した女性が、二人とも、すさまじく魅力的なのだ。
真面目で、愚かで、生一本で、行き当たりばったりで、セクシーで、清純で、狂っている……そんな女性を、これでもかとばかりに、増村保造監督は、この映画「妻二人」で生み出し、躍動させたのである。
それにしても、若尾文子と岡田茉莉子、ともに素晴らしかった。
岡田茉莉子は好きな女優ではなかったが、この映画で見直した。
全身、女の妖気をまとった女性を演じきった女優を、初めて見た気がしている。
「妻二人」は、増村保造監督の代表作であり、最も増村らしい「増村節炸裂」映画と呼ぶことにしたい。