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反戦詩をシリーズで、掲載してゆきたいと思います。
今日の詩は、ウィルフレッド・オーエン「甘美でふさわしきこと」です。
甘美でふさわしきこと
曲がった腰、荷物の下の古い乞食のように、
膝を悪くし、魔女のように咳をしながら、泥道を呪い進んだ、
不気味なフレアに背を向けて、
そして遠くの安息へ向かって歩き始めた。
男たちは眠りながら行進していた。多くは靴を失っていたが、
血に濡れた足でひょうひょうと歩き続けた。皆が足を引きずり、皆が見えなかった;
疲労に酔い、後ろで静かに落ちるガス弾の音さえ聞こえなかった。
ガス!ガス!急げ、みんな!—手際の悪いヘルメットを我慢強く調整する興奮
なんとか間に合ったが、
誰かがまだ叫び、つまずきながら
火や石灰の中で苦しんでいるようだった。—
霧のかかった窓越しの厚い緑の光の中、
緑色の海の下で、彼が溺れているのを見た。
夢の中で、私の無力な視界の前に、
彼が私に向かって突進してきて、息を切らし、窒息し、溺れている。
もし、いくつかの窒息しそうな夢の中で、あなたもまた
私たちが彼を放り込んだ荷車の後ろを歩けるなら、
そして彼の顔で白い目がよじれているのを見て、
彼の垂れた顔、罪に疲れ果てた悪魔のように;
もし、毎回の揺れで、その血が
泡で汚れた肺からゴロゴロと湧き出てくるのが聞こえたら、
癌のように不潔で、悪徳に満ちた
無実の舌の上の癒しがたい傷のように苦い、—
友よ、あなたはそんな高揚を持って語ることはできないだろう
絶望的な栄光を求めて熱心な子供たちに、
古い嘘を:甘美で名誉あることは
祖国のために死ぬことだ。
第一次世界大戦の真実を告発した反戦詩:ウィルフレッド・オーエン「甘美でふさわしきこと」を読む
「祖国のために死ぬことは、甘美でふさわしきことである」。
これは古代ローマの詩人ホラティウスが残した有名なラテン語の格言(Dulce et decorum est pro patria mori)であり、第一次世界大戦当時のヨーロッパにおいて、若者たちを戦場へと駆り立てるためのスローガンとして広く使われていました。
イギリスの詩人ウィルフレッド・オーエン(1893-1918)は、自らも志願して西部戦線へと赴いた兵士でした。
しかし、彼がそこで目の当たりにしたのは、勇ましい英雄譚などではなく、泥と血と毒ガスに塗れた凄惨な現実でした。
オーエンが戦地で書き上げ、彼の死後(終戦のわずか1週間前に25歳で戦死)に出版された詩「甘美でふさわしきこと(Dulce et Decorum Est)」は、戦争を美化する「古い嘘」を根底から打ち砕く、英文学史上最も強力な反戦詩の一つとして知られています。
本記事では、この名作を4つの場面(連)に分け、その詳細な描写と込められたメッセージを読み解いていきます。
第1連:極限まで疲弊した兵士たちの現実
曲がった腰、荷物の下の古い乞食のように、
膝を悪くし、魔女のように咳をしながら、泥道を呪い進んだ、
不気味なフレアに背を向けて、
そして遠くの安息へ向かって歩き始めた。
男たちは眠りながら行進していた。多くは靴を失っていたが、
血に濡れた足でひょうひょうと歩き続けた。皆が足を引きずり、皆が見えなかった;
疲労に酔い、後ろで静かに落ちるガス弾の音さえ聞こえなかった。
詩は、戦場から後方の陣地へと撤退していく兵士たちの姿から始まります。
ここで描かれるのは、胸を張って行進する若き英雄の姿ではありません。重い装備に腰を曲げ、「古い乞食」や「魔女」のように咳き込む、心身ともに限界を超えた男たちの群れです。
靴を失い、血にまみれた足で泥道を引きずるように歩く彼らは「疲労に酔い」、視覚も聴覚も麻痺しています。
背後で静かに落下してくる致死的なガス弾の音にすら気づかないほどの極限状態が、生々しいリアリズムをもって描写されています。
第2連:毒ガス攻撃のパニックと絶望
ガス!ガス!急げ、みんな!—手際の悪いヘルメットを我慢強く調整する興奮
なんとか間に合ったが、
誰かがまだ叫び、つまずきながら
火や石灰の中で苦しんでいるようだった。—
霧のかかった窓越しの厚い緑の光の中、
緑色の海の下で、彼が溺れているのを見た。
静寂は、突如として「ガス!ガス!急げ、みんな!」という叫び声によって破られます。
第一次世界大戦は、近代兵器としての毒ガス(塩素ガスやマスタードガスなど)が初めて大規模に使用された戦争でした。
兵士たちはパニックの中でガスマスク(ヘルメット)を装着しますが、一人の兵士がそれに間に合いませんでした。
詩人は、ガスマスクのガラス越し(霧のかかった窓越し)に、緑色の有毒ガスの海の中で「火や石灰の中で苦しんでいる」かのように、友軍の兵士がもがき苦しみ、溺死していく姿をただ無力に見つめることしかできません。
第3連:永遠に続くトラウマ
夢の中で、私の無力な視界の前に、
彼が私に向かって突進してきて、息を切らし、窒息し、溺れている。
わずか2行の短い連ですが、詩の核心となる部分です。毒ガスで溺れ死んでいく兵士の姿は、単なる過去の記憶にとどまらず、毎夜の「夢」となって詩人を永遠に苛み続けます。
現代の医学で言うところのPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が、ここで明確に表現されています。
戦場を離れても、戦争が終わっても、あの「無力な視界」から逃れることはできないという、終わりのない苦痛が刻み込まれています。
第4連:安全な場所から戦争を語る者への告発
もし、いくつかの窒息しそうな夢の中で、あなたもまた
私たちが彼を放り込んだ荷車の後ろを歩けるなら、
そして彼の顔で白い目がよじれているのを見て、
彼の垂れた顔、罪に疲れ果てた悪魔のように;
もし、毎回の揺れで、その血が
泡で汚れた肺からゴロゴロと湧き出てくるのが聞こえたら、
癌のように不潔で、悪徳に満ちた
無実の舌の上の癒しがたい傷のように苦い、—
友よ、あなたはそんな高揚を持って語ることはできないだろう
絶望的な栄光を求めて熱心な子供たちに、
古い嘘を:甘美で名誉あることは
祖国のために死ぬことだ。
最後の連で、詩人は明確に「あなた(友よ)」に向かって語りかけます。
この「あなた」とは、安全な銃後(母国)から、戦争の現実を知りもしないのに愛国心を煽り、若者たち(熱心な子供たち)に「絶望的な栄光」を吹き込む人々を指しています。
もしもあなたが、荷馬車に投げ込まれた兵士の死体から血が湧き出る音を聞き、そのおぞましい死に顔を見たのなら、二度と「祖国のために死ぬことは甘美でふさわしい」などという「古い嘘(The old Lie)」を、声高に語ることはできないはずだ——。
オーエンの筆致は、肺が破壊されていく描写(泡で汚れた肺、癌のように不潔で)において極めてグロテスクであり、だからこそ圧倒的な説得力を持っています。
戦争を抽象的な「栄光」として語る欺瞞を、肉体が破壊される物理的な「事実」をもって完膚なきまでに告発しているのです。
まとめ
ウィルフレッド・オーエンの「甘美でふさわしきこと」は、単なる悲哀や平和への祈りを超え、戦争の現実を覆い隠そうとするプロパガンダに対する強烈な怒りに満ちた作品です。
100年以上前に書かれた詩でありながら、そのメッセージは少しも色褪せていません。現代においても、国家や大義の名の下に人命が失われる出来事が絶えない中、この詩は「戦争を美化する言葉」に対する鋭い警鐘として、私たちに重い問いを投げかけ続けています。


