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風花未来の今日の詩は「聴こえてくるものは」です。

 

椅子に腰かけ

何もしないでいる

 

抗がん剤の副作用で

体はヘトヘトだ

心は萎えきっている

 

椅子に腰かけ

じっとしていると

さまざまな物音が

聴こえてくる

 

換気扇の音

カラスの鳴き声

風が吹きすぎる音

子供たちの叫び声

自販機で缶が落ちる音

救急車のサイレン

自衛隊のヘリコプターの暴音

 

ひどい

ロクな音が聴こえてこない

耳ざわりなだけでなく

心まで渇いてくる

 

幼い頃に聞いた

優しい音たちは

どこに消えたのだろう

 

若い母親の子守歌

豆腐屋のチャルメラ

少女たちの手まり歌

ツバメのさえずり

小川のせせらぎ

遠くから響いている海鳴り

かすかな雨音

 

手をさしのべても

懐かしい音は

帰ってこない

 

かといって

好きな音楽を聴く気にもなれない

 

ただ

身動きもせず

じっと

椅子にすわっている