今日の風花未来の詩は「桜、揺らぐ風景の中で」です。
桜、揺らぐ風景の中で
風景が揺らいでいた
満開の桜も
乱反射する光の中で
蜃気楼のように
揺らいで見える
抗がん剤の副作用のせいだ
春爛漫のはずなのに
手足がしびれているだけでなく
眼に見えるものすべてが
かすみ
ぼやけ
幻のごとく
しびれている
母親と幼い子が
手をつないで
桜を眺めている
ああ
今日は
入学式なのだ
めまいをおぼえ
眼を閉じて
立ち止まった
しばらくして
眼を開けると
桜の花びらが
いっせいに
散り始めた
時という風が
私の中で
吹きすぎてゆく
揺らぐ風景の中で
桜の花びらは
幻の舞いを
いつまでも
舞いつづけた