サトウハチローの「小さい秋みつけた」というをご紹介します。

 

「小さい秋みつけた」全文はこちら

 

解釈する必要はありませんね。素直に秋が感じられれば充分だと思います。

 

ただ、文学的に鑑賞しようとして、言葉の組み合わせなどを分析しますと、その完成度の高さに舌を巻かざるを得ません。

 

「誰かさん」といっていますが、この「誰か」はサトウハチロー自身です。3番の3行目に「風見の鳥の」とありますが、幼い頃に母親に連れて行かれた教会の風見鶏であるとのデータがあります。

 

この歌詞のテーマは表面的には「秋の発見」になっていますが、実は郷愁の詩です。幼い頃、特に母親への懐かしさが抒情の底流に流れています。

 

サトウハチローの母親は彼が14歳の時に離婚して家を出てしまったのです。その後、荒んだ青春期を過ごすことになるのですが、それだけに、母親との思いでは、哀しく美しいものであったことは想像にかたくありません。

 

自分自身であるにもかかわらずに「誰かさん」といったことで、世界が広がり、童謡としての普遍性をかち得ています。

 

秋を「見つけた」のは、ハチローの目だけでなく、耳であり、皮膚感覚であり、そして心でした。読んでいるだけで、感性が洗われてしまうほどの傑作です。

 

さて、この童謡「小さい秋みつけた」は、昭和30年に、NHKの特別番組「秋の祭典」のために作られたとか。その後、レコード会社のディレクターが発掘。ボニー・ジャックスという男性コーラスグループに歌わせてみたところ、それが大ヒット。

 

その年のレコード大賞童謡賞を受賞してしまったと言いますから、歌の運命というものもわかりませんね。

 

その他、サトウハチローの代表作と言えば、これも忘れられません。

 

サトウハチロー「長崎の鐘」の言葉力

 

サトウハチローの才能は、半端ないですね。

 

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