風花未来の詩、今日お届けするのは「音もなく滑り出した」です。
音もなく滑り出した
いつか始まる時がくる
そう予測はしていたけれど
これほど早くはじまるとは
音もなく滑り出した
雪の上に滑り出ると
視界が無限大に広がるはずだのに
わたしは
はるか前方にある
あの場所だけを
心の眼で凝視していた
行ったきりで
帰れない旅になるかもしれない
あの場所を目指すが
そもそも
あの場所は
今はないかもしれない
だぶん
跡形もなく消え去っているだろう
しかし
もう わたしは滑り始めた
わたしの背中を押したのは
神がかった摩訶不思議な力
奇跡へと通じる
運命しか信じない
魂の叫びに違いない
あの場所を一心に目ざす
今の私には
真昼でも星座が見える
だから 迷うまい
あの場所への道筋を
真っ白な
雪月に滑り出た
わたしは 今
天空に輝く
ひとつの恒星だけを
見つめている
