映画「最後の初恋」は、ダイアン・レインの演技を見るだけでも豊かな満足感に浸ることができす。
どんな映画でも小説でも、結末の描き方は難しい。
それにしても、この「最後の初恋」は、エンディングの描き方の選択を誤ったことが、惜しまれる。
この映画のエンディングによって、極めて良質な切ない大人のラブストーリーに仕上がってしまった。
この結末ではなく、他のラストシーンを選べば、映画史上に燦然と輝く、名画中の名画になったかもしれないのに……。
映画「最後の初恋」は、アメリカでは2008年9月26日に、日本では2008年9月27日に、共にワーナー・ブラザース配給で公開された。
リチャード・ギアとダイアン・レインは「コットンクラブ」、「運命の女」に続く3度目の共演となった。
監督はジョージ・C・ウルフ。この映画を撮る動機が、定番の大人のラブストーリーだったのだろう。
人物・状況・舞台設定は完璧。前半から中盤にかけて、丹念に精魂込めて描いてきたすべてのシーンが、ラストの描き方で、ほぼご破算になってしまった。
終盤に入るまでの質の高さが絶品であり、とてつもない傑作の予感がしていただけに、かえすがえすも惜しい。
結末が安直すぎた。
それでも、ダイアン・レインの演技力によって、視聴者は最後まで画面に釘付けにあるだろうけれども。
ただ、制作の意図が、気軽に鑑賞できる大人の恋の物語であるならば、この終わり方もうなずける。
こうなったら私に残された選択は2つしかない。
一つは、素晴らし過ぎるダイアン・レインの演技だけを味わうこと。
もう一つは、ダイアン・レインを起用して、ラブストーリーを超えたヒューマン・ドラマを制作する監督が現れるのを期待すること。
今見終えたばかりだが、とにもかくにも、ダイアン・レインの演技は珠玉である。
映画のための映画、演技のための演技、それらを楽しむことが、実は本来の映画の楽しみ方だとも言えるのだが……。