風花未来の今日の詩は「つかのまの秋」です。

 

つかのまの秋

 

夏が消え去ってゆく

 

夏の香りが

好きなはずなのに

今年は

夏の香りを

楽しめなかった

 

大手術の後遺症と

闘う日々がつづいたから

 

気がつけば

夏の後ろ姿も

遠くに見えるくらい

秋めいてきた

 

秋の微細な気配が

好きなはずなのに

急な冷え込みが

一気に  秋を

冬色に

塗りつぶそうとしている

 

それでも

今は 秋

夏でも

冬でもない

 

つかのまの秋を

ひそかに味わいたい

 

つかのまの秋には

独りが似合う

 

孤独が

これほど 心に

深く沁み入る秋は

生まれて

初めてかもしれない

 

もうすぐ

独りだけの誕生日が

足音もたてずに

やってくる