岩井俊二監督の映画について、まだ語っていませんでしたね。
ほとんどすべて観ているのですが、やはり、真っ先にあげるべきは、「Love Letter」でしょうか。
「Love Letter」
『Love Letter』(ラヴレター)は、1995年公開された岩井俊二監督の日本映画。
中山美穂、豊川悦司主演。誤配された恋文からはじまる、雪の小樽と神戸を舞台にしたラブストーリー。
TVドラマやCMなどで活躍していた岩井俊二の劇場用長編映画第1作。
思い出に鮮明な作品。
最初見た時、アッという感じだった。
映画を見なくなっていた頃だ。
新しい映像が出てきたな、と嬉しい気分になったのを憶えている。
これこそ理屈ぬきで感じればいいだろう。感じなかった人にとっては、この映画はつまらないということになる。
少女感覚(男も持っている)を呼び覚ましてくれる映像詩。
少女マンガのコマワリを見ているようなカット割り。少女の感覚世界に117分間、遊ばせてくれただけで充分だった。
少女をこれほど少女らしく描いた映画監督はいなかった。
男の感性というフィルターを通過していない、本物の少女が呼吸していると目に映った(女性の方は、どう思うだろうか)。
すぐに友人に電話。いい映画が出てきたぞ……その何日か後、落胆しきった友人の声が聞こえた。
〈俺、本当に、けっこう真剣に見たんだぞ、それなのに、ウー〉。
彼を慰めるのに苦労した。合わない人には、合わないみたいだ。渋谷系などと言うひともいるみたい…。
岩井俊二の他作品もかなり見ている。でも「Love Letter」がいちばん好きだ。
「岩井俊二は少女である」というキャッチフレーズが、雑誌の表紙を飾っているのを観たことがある。
核心を突いた、いいヘッドコピーだと思った。
絶頂期の中山美穂の魅力も余すことなく抽出していた。
中山美穂も酒井美紀も、涙が出るほど、みずみずしい。
もう、みんな齢をっとってしまって見る影もないが、映画の中でだけは、女優のピークの輝きにいつも出逢えるのだ。それは嬉しいことでもあり、悲しいことでもあり……。
難しい映画評論など要らない、記念すべき、少女マンガならぬ少女映画の登場だった。
【鑑賞のツボ】
少女感覚で作られた、しかも非常に優れた、極めて珍しい佳作。
少女を描かせたら、岩井俊二監督が、ピカイチ。
そのピークがこの作品であり、女優・中山美穂のピークでもあった。