久しぶりに山田太一が脚本を担当した、いわゆる「山田太一ドラマ」を鑑賞しました。「刑事の恋」です。

 

結論から申しますと「よくぞ、ここまで面白いドラマを書いたものだ」、その一言に尽きます。

 

とにかく、面白い、先が見たくなる、見る側も全身のエネルギーを画面にぶつけるようにして、ドラマに立ち向かわざるを得なくなる、そんな作品です。

 

では、この「刑事の恋」の面白さについて、語ってみることにします。

「刑事の恋」は、1994年4月7日に、20:00から21:48まで放送されました。日本民間放送連盟賞優秀賞を受賞。

 

主演は、中井貴一。不器用な青年刑事を演じています。中井貴一は「ふぞろいの林檎たち」にも出演。山田太一にはなじみの深い役者です。中井貴一は他の山田太一ドラマと同様、自分に与えられ役回りを無難にこなしている感じでした。

 

実は、その他の配役が実に効いているのです。キャスティングの勝利ともいうべきドラマかもしれませんね。

 

寿司屋の大将役を演じた川谷拓三が良かった。川谷拓三がいなかったら、この「刑事の恋」の面白さはかなり減っていたと思います。

 

中井貴一の上司役の津川雅彦はとぼけた味を出していて効いていました。

 

中井貴一が愛した女性の兄役となった柳沢慎吾は、他の「山田太一ドラマ」とまったく同じテキストで演じていましたが、やっぱり彼は必要ですね。

 

その他、ちょい役で出てくる俳優たちは芸達者な人たちばかりで、ドラマがしまっていました。

 

平田満、、渡辺えり子、斉藤晴彦(斎藤 晴彦)、中野英雄、櫻井 淳子(桜井 淳子)、白川由美、小坂 一也、柳葉敏郎、橋爪功、日野陽仁、布施博、村上冬樹、西岡徳馬、掛田誠、赤座美代子、手塚理美……。

 

そして、最後に強調したいのが、中井貴一の相手役であり、もう一人の主演ともいえる、富田靖子の存在。

 

富田靖子は以前から、ツボにはまると凄い演技をする女優だという印象がありますが、この「刑事の恋」では、富田靖子の美点が全部出てきた、そんな感じがしました。

 

特に、久しぶりに中井貴一を再会するシーン。本当に圧倒されました。女性の強さ、怖さを見て、息をのみました。

 

富田靖子のこれが全盛期でしょうね。この機会に富田靖子が出演したほかの映画やドラマを見てみたいと思いました。

 

総合的に評価すると、数多い山田太一ドラマの中でも、上位に来るレベルの作品です。

 

上位に来る理由は、傑作だからというより、面白いからです。とにかく、ドラマは面白くなくてはいけません。

 

本当に久方ぶりに、「刑事の恋」で、ドラマの凄さを実感できました。残念ながら、DVDは発売されていません。YouTubeで鑑賞するしか方法はないので、ぜひネットでいいから見れるように配信してほしいものです。