山田洋次監督の映画はほとんど見ているのですが、今回鑑賞した「家族」だけは、最後まで見れていませんでした。
作風があまりにも山田洋次的であるので、波長が合わない時は拒絶してしまうのかもしれません。
結論から言いますと、この「家族」は山田洋次監督の最高傑作です。
「幸福の黄色いハンカチ」も実に優れた映画です。映画館で何回となく見ました。高倉健とともに永久にのこる名作。
「学校」を見て体の芯まで温まった感覚を一生を忘れないでしょう。西田敏行と田中邦衛の演技は秀逸。
「男はつらいよ」シリーズで、宇野重吉と寺尾聡が出てくる第17作目の「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」を見て「やられた」と思いました。こういう人生の描き方(視点のユニークさ)があったのかと、茫然としたのを覚えています。
その他、「同胞」「息子」など。
それでもなお、この「家族」が山田洋次監督が作った映画の中でナンバーワンだと、あえて言い切りたいのです。
その理由は?
「家族」は本当に山田洋次監督しか撮れない映画です。
このテイスト、この作風、この空気感、この人物の描き方……山田節すぎるのです。
しかも、人を、自然を、時代を、命を、真正面から描き切っている。
斜めからは絶対に見ていない。向き合って、一歩も退かないし、目をそらさないし、倒れても、諦めないで、また歩き出す、生き始める……こういう描き方ができる映画監督は山田洋次しかいません。
俳優陣も、渾身の演技を見せています。
特に、倍賞千恵子の演技は神がかっている。子供を失った後の倍賞千恵子は、役になりきり、魂で演じているように見えました。
井川比佐志の熱演はもちろんですが、笠智衆の存在は光っていました。
少ししか出てきませんが、渥美清、クレージーキャッツのメンバー、春川ますみ、前田吟などの脇役も豪華で、いい味が出ていました。脇役陣の演技も楽しめる映画です。