東京の高円寺は、昨日からの雪で、あたりはまだ真っ白です。
昨日、ようやく、新しい電子書籍の出版にこぎつけたこともあって、最近は仕事に追いまくられっぱなし。
あわただしく過ぎてゆく時間を止めてくれたは、真っ白な雪でした。
雪はめったに降らないので、白いものが舞ってくると、何か不思議なことが起きるのではないか、
そんな胸騒ぎがすることって、ありませんか。
実は昨日、2月14日に、本当に不思議な出来事があったのです。
夕暮れ時に、ドアホンが鳴りました。めったに私の部屋には訪問客はありません。
来るとしたら、新聞の勧誘か、それとも……
急いでドアを開けると、そこには、雪で真っ白になった宅配の配達員が立っていました。
しかし、荷物が届く予定は思い当たらず、何だろうかと、印鑑を押してドアを閉めてから、
包みを開けようとしたですが、明かりの消えた部屋は暗すぎるので、バルコニーに出ました。
雪明かりに照らし出されたものは……
そう、今日はバレンタインデー、でした。
しかに、荷物には差出人の名がありません。
呆然として、私は寒さも忘れ、美しい小箱を持ったまま天空をあおぎ、
雪の音を聞いているしかできませんでした。
一夜明け、ふと、こう想ったのです。
ひょっとして、妖精がチョコレートに姿変えて、私のもとを訪れたのではないか。
妖精の名は、ひょっとすると「初芽(はつめ)」?
「風花初芽」は、私の新作の書名です。偶然ですが、発売日がバレンタインデーと重なったのでした。
2月14日。雪の日の突然の訪問者。
窓の外を眺めると、妖精の影が動くような気がして……。
1日過ぎた今日も、その愛らしいリボンを、まだ解けないままでいます。