小春日和こはるびより)」という言葉を、私は若い頃、間違えて使っていました。

 

2月とか3月に、ふと暖かい日があると、そのことを「小春日和」と呼んでいたのです。

 

「まだ冬なのに、ちょっと春みたいな陽気だ」くらいの意味で使っていたのですね。

これは明らかに間違い(苦笑)。

 

夏のはじめに「麦秋(ばくしゅう)」という言葉があるのですが、「小春」は冬のはじめに使われる言葉です。

 

寒さが日ごとに増す、立冬すぎの頃、冷たい風も吹かない、穏やかな暖かい日が急に訪れることがあります。

 

そのことを、忘れかけていた春の陽気を想い出させることから「小春」「小春日和」と、日本人は表現してきました。

 

「小春日和」を使うべき時期は、冬の終わりではなく、冬のはじめなので、間違えないようにしたいものです。決して、三寒四温の時期に使う言葉ではありません。

 

島崎藤村が「千曲川のスケッチ」で「小春日和」の季節感をあらわした一節を、ご紹介しましょう。

 

寒い日があるかと思うと、またばかに暖かい日がある。それからいっそう寒い日が来る。

 

私の中で「小春日和」というとすぐに想い出す歌があります。それは、山口百恵が唄った「秋桜」。作詞と作曲は、さだまさし

 

こんな小春日和の穏やかな日は

あなたの優しさがしみてくる

 

もうすぐ嫁ぐ娘の視点から母親を描写した名曲ですね。

 

二番の歌詞も良いのです。以下のように締めくくられています。

 

ありがとうの言葉をかみしれながら

生きてみます 私なりに

 

こんな小春日和のおだやかな日は

 

もう少し あなたの子供でいさせてください

 

「小春日和」という言葉が、これほど効果的かつ美しく使われた例は、他にはないのではないでしょうか。