映画「終着駅」を初めて鑑賞しました。有名な映画ですが、なぜか、今まで見ていなかったのです。

 

「終着駅」は、1953年に公開された、米伊合作映画。監督は名作「自転車泥棒」や「ひまわり」などで知られる、イタリアの名匠・ヴィットリオ・デ・シーカ

 

主演は、ジェニファー・ジョーンズモンゴメリー・クリフト。二人芝居と言っていいくらい、二人だけ(二人を中心としたカメラアングル)のシーンが極めて長い、珍しい構成となっています。

 

いわゆる、メロドラマです。ただ、単なるメロドラマを、ここまで情緒豊かに仕上げた、映画監督の手腕には驚かされます。

 

モンゴメリー・クリフトはただ顔がいいだけの大根役者かもしれないのですが、持って生まれた雰囲気は素晴らしい。その顔の表情と雰囲気を最大限に生かされていました。

 

ありきたりなラブロマンスに堕していないのは、たぶん雑踏や群衆の描き方が巧みだからでしょう。

 

メロドラマなのに、これほど群衆が出てくる映画を他に知りません。貧しく、時には品性に欠ける庶民たちの表情や風情が、二人の美男美女を悲しいまでに際立たせます。

 

それと、顔のアップが多いのも、この映画の特徴のひとつ。

 

モノクロ映画の良いところは、出演者の顔に注視できること。誰も乗っていない汽車の中のラブシーンは、歴史に残る名場面といっていいでしょう。

 

見る側は他の情報が何もないので、二人の表情に集中できるのです。この極めて感度の高い集中を生み出した名シーンは本当にすばらしい。光と闇、男と女、そして愛、それしかこのシーンにはないのです。

 

ともあれ、「終着駅」は古き良き時代の映画の良さを凝縮させた、名画であることは間違いありません。